【第3話】調子に乗る

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インドから帰った私はまた働き始める事にしました。

世はバブルに突入しようかという頃で就職情報誌も今の3倍ぐらい分厚くて、服飾
デザイナーの募集もたっくさんありました。

その中で一番大手で一番条件の良さそうな所に目を付けて応募、何だか分から
ないけど、採用されてしまいました。

大阪に本社を置く某大手商社の企画室のデザイナーとなりました。

はっきり言って何ていいかげんなもの作りをしているんだろう、と驚きました。

でもそれなりに頑張って、しばらくここで働こうかなー、と思っていた矢先に何と!
私に東京転勤の内示が・・・

すっごく単純な私は東京の企画室に転勤だぁー、ランラランラララー♪といった感じの
おバカ状態でした。

その頃『シンデレラエキスプレス』というのがはやっていました。

東京と大阪に分かれた彼と私。週末ごとに逢うのよ。新幹線のホームでコマーシャル
で見たようなさよならを毎週するのよ。と勝手に決めて盛り上がっていました。
彼と私の恋は転勤を気にますます燃え上がるはず、と固く信じていました。

それ以上何も考えず、喜んでいたバカな私・・・

とりあえず、報告を彼にしなくっちゃ!と

「東京に転勤しないかと言われたよ。どうしようかなー。」と一言。

帰って来た言葉は思いもかけないものでした。

「あっそう。どうするかって、はっきり言って他人事・・・」

今でもこの時の彼の言葉は忘れられません。突き落とされた気分でした。

絶対愛されている自信があったので「行くな、結婚しよう」という答えを一番求めて
いたのかも知れません。

これは、シンデレラエキスプレスどころか転勤してしまったら私達の関係も終わりだな、
と感じました。

考えの甘さに初めて気が付き、愕然とした瞬間でした。

・・・次の日、上司に転勤を断りました。・・・

転勤を断ったらサラリーマンデザイナーは辞めるしかないです。

彼を失う事を考えたら会社を辞める事は大きな問題では有りませんでした。

その時の自分にとって何より大切なものを選択しました。

今考えると彼の「はっきり言って他人事」という返事は私を行かせまいという彼の作戦
だったかも、という気がしています。

それからも、その一件は無かったかの様な今までと同じ付き合いが続きました。
次の会社もすぐに見つかり、またデザイナーとして働き始めていました。

私は段々あせってきました。20代も後半、これからどうなるのだろう。

安心と安定が欲しい、と強く思い始めていました。

でも自分から、「結婚しよう」とは言えなかったです。ただ言ってくれるのを待っていました。

そんな楽しいけれど不安な毎日が続いたある日、彼に飲みに誘われました。
ちょうど私の26才の誕生日でした。

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